祐介先生、牟田さん、こんばんは。
東京の桜はもう満開を過ぎましたかね。私のいる軽井沢はまだ桜は咲いていません。来週の放送の頃にはちょうど良い時期になると思います。
昨日は午後訪問診療の日でしたので久しぶりに祐介先生が院長をしてくれていた高崎市の診療所に通ってくれていた患者さんのところに行ってきました。最初は自分一人で行こうと思っていましたが康二にスタッフに一緒に行ってもらうように言われ、古越君という最近入ったばかりのスタッフと二人で行ってきました。
訪問先の患者さんはご主人に先立たれ、今は一人で住んでいますが75歳を過ぎ足腰に問題を抱え、心臓の手術をしていますから日常生活にも大分制限を受けています。ご主人が亡くなってからはテレビを見る時間が長くなって人と会話する時間も短くなって声が出にくくなったそうです。私は朝でも昼でもいつでもいいから童謡でも演歌でもいいから大声で歌った方がいいよと勧めましたがどうも気乗りしないようで良い返事を貰えませんでした。
年を取ると人のいうことを素直に受け取ってくれない人が多くなります。若い人が勇気を振り絞って話しかけても良い受け答えをしてもらえないから話しかけなくなってしまいます。その結果ますます孤立してしまいます。
歌でも歌った方が声が出るだけでなく元気も出るからいいと言っているだけで、特別にお金や手間がかかるわけでもないのに・・・・。「ああ、そうかい。それじゃあやってみるかね」と言ったら良いものを言えない懐の狭さがもったいないです。私が入院している時に書いた看護師さんが「ハイ」という声を出して困っている私の頼み事を「素直に聞いてくれたこと」がどれほど病人にとって力を与えてくれたかということを改めて思い出してしまいました。周りの人がどんなに応援したくても当の本人がその気になってくれなければどうにもなりません。何年振りかで久しぶりに会う人に元気も勇気も感動もやれません。こんな時だからこそ「ハイ」という言葉と「素直」という言葉の重みを感じさせてもらいました。
その帰りに古越君がうちの診療所に来るまではボランティアのことを考えたこともなかったけれど、ハローアルソン・フィリピン医療ボランティア2025の報告会に参加してハブラシ集めの大切さを知って友人にも声掛けをしていることを聞かせてくれました。素直になって参加してくれたからこその賜物だと思います。
こうして何かをきっかけに新しいことに積極的になることはとてもいいことで、過去がどうだったかなんて全く関係ありません。過去はどんなことでも消すことも隠すこともできないのです。ほかの人に言われたら「素直」に協力できる人間性が一番良いのではないでしょうか。
2025年4月11日
医学博士・歯科医師 林 春二