2025.03.21 林会長のお便り

祐介先生、牟田さん、こんばんは。

 

  今回は春のお彼岸ですね。あと一回の放送で今年の4分の1が終わってしまいます。光陰矢の如し、流れる水止まるところ知れずということを実感しています。

 かつてハローアルソン・フィリピン医療ボランティアでその年のテーマを絞り切れずに「夢」や「この世で一番大切なもの」なんて言うテーマで語ってもらったことがありました。参加している高校生たちも住み慣れた日本という恵まれた環境の中ではなく、その日食べる食にも事欠く大変な生活をしているスラムの人達を見て時に涙し、同じ齢どころかもっと小さい子供が泣きながら歯を抜かれる姿を見て、世の中の不条理を考えさせられたと思います。日本に生まれたら、歯が痛ければ歯医者に通いすぐに治療を受けられる人もいるのに、痛くても歯医者に行けずにただ我慢しなければならない人がいるなんてこの活動に参加していなければ判るはずもありません。そうした体験をしてみると「流れる水に洗われるが如く」心が洗われて「人の哀れさ」に気づかされるのです。その瞬間に立ち会っていた人たちはすべての人が、自分の幸せは世界中の人達の幸せとは違うことに気づかされたと思います。そして高校生は世の不条理を嘆き、自分はしっかり勉強して将来は教育者になって発展途上国に行って貢献したいという人や、医者や歯医者になって今回自分の前で真剣に治療している先生のようになりたいと夢を膨らませてくれました。それが今回、歯科医師国家試験合格者4名、医師国家試験合格者1名という最高の結果に繋がったと思います。

 こうした経験がなければ自分をしっかり見つめることや、自分を生んでくれた両親に感謝することもなかったと思います。参加してくれた高校生の皆様全員に感謝したいと思います。そして目に入れても痛くないと言われる大切なお子様を、私たちの活動に参加させてくださった御両親や、その高校生が在籍している高校の先生方に心から感謝申し上げます。それにも増して20年以上にわたってカンパ、ハブラシ、タオル、石鹸などの沢山の物資を提供し続けて下さった優しい皆様がいなかったらこの活動は継続することはできませんでした。本当に本当にありがとうございました。

 私が今回改めてその源である「命」について考えたいと思ったのはこの活動の提言者である私が、両親の元に生れなかったとしたらこの活動は生まれなかったということなのです。その両親にはさらに両親がいてその両親にも両親がいて・・・・。それこそ数限りない「命のバトン」が私に繋がれていたことを考えると今まで参加してくれた高校生700名以上の命の連鎖はものすごい数に上ります。こうして繋がれた命のバトンは奇跡とも言えます。私たちは命は自分だけが守っているように思っているかもしれませんが、そんなことはありません。沢山の人達の協力や努力があって今日まで支えられているのです。この幸せがさらに続けられるようにみんなで協力しあって、心を合わせて今日より明日、そして未来永劫に続けられるように努力していきたいと思います。

          2025321日 医学博士・歯科医師  林 春二