祐介先生、牟田さんこんばんは。
明けましてお目出とうございます。2024年の幕明けですが、新年早々から大変なことが起こってしまいました。群発地震が続いていた能登半島でマグニチュード7.6の大地震が発生しました。2024年1月1日、月曜日、16:10のことです。私はテレビを見ていましたが、「地震警報」と「津波警報」が鳴りっぱなしでした。こんなことはじめての経験でした。被災された全ての皆様にお見舞い申し上げます。
その日は奈良県に住む教え子が来ていて、二人で大変なことになったと話し続けていました。教え子は進君といいますが、お父さんはお医者さんで、学生時代からとても優雅に暮らしていて、今でもそのままでした。オートバイの事故で右膝が少々具合悪いようですが、元気で、これから私のところで訪問診療担当でやってくれるために打ち合わせに来たところでした。
学生の頃から私の家に出入りしていて私の母に可愛がられていました。母が晩年過ごしていた部屋で泊まってもらうことにして案内すると、「お母さんのいた部屋だ」と懐かしそうにしている姿がとても懐かしく、進君の学生時代と元気だった頃の母親がハッキリとよみがえってとてもいい時間を持てました。
進君を駅に迎えに行った時、白いダウンジャケットをはおり、リュックを背負って足を少し引きずった姿は一瞬、進君とは思えず、改札で見過ごして最後のお客さんが改札を通るのを見届けてから、やはりあの白いダウンが進君だったのではないかと思いなおして、タクシー乗り場にいるダウンの人に「進か?」と声をかけると、そのダウンの人が「あ、先生!」とうれしそうな顔になり近付いて来ました。よく見ると右足を少しかばうような歩き方をしているので「どうした?」と聞くと、若い頃オートバイで転んだ時の古傷が寒くなると痛くなりこうして足をかばうような歩き方になるということでした。
ところで、40年前にはあんなに私のところにくっついて離れることがなかった進君も結婚して開業してからはほとんど連絡が切れていましたので、その変化が思い起こせなくなっていましたが、話し出すとそれこそ一瞬の内にその空白は埋まってしまい、まるで昨日までずっと一緒にいたかのような気持ちになってしまいました。
時の流れは不思議な力を持っています。嫌なことや、悲しいことは時間と共に遠くの彼方に流してくれます。そうかと思うと離れ離れになっていて存在さえ忘れていたようなことでも、顔を合わせて話を聞いていると、どんなに長い空白も一瞬の内に埋め尽くしてくれます。いいことであっても、嫌なことであっても「一喜一憂」しないで「泰然自若」としてすべてを飲み込む力を養いたいと思います。
ハローアルソン・フィリピン医療ボランティア第18回の出発は1ヶ月に迫りました。
今年一年が皆様にとって実り多い年になりますようにお祈りしています。
2024年1月5日
医学博士・歯科医師 林 春二