2023.12.22 林会長のお便り

祐介先生、牟田さんこんばんは。

 今年の放送もあと1回になりました。今年はハロアルレディオ1000回の記念すべき放送が106日にありました。関口団長、せがれの康二と一緒に参加させてもらっている所に新潟の羽尾先生が飛び入りで参加してくれました。とても楽しい番組だったと思います。竹が節を作って丈夫になるようにこの1000回記念がハロアルレディオにとってどんなことにも負けない強くたくましい節になって欲しいです。

 前回小学校5年生の話をさせてもらいました。ハローアルソン・フィリピン医療ボランティアで出会ったフィリピンのスラムの子供の中には「自分の夢は15歳まで生きること」という切ないような夢を持っている子供達がいることを聞いた今井君が家に帰りゲームを買うためにコツコツ貯めたお小遣いを全部この活動に寄付してくれました。

 祐介先生、関口団長とデンマークに行った時、患者さんが一番されたくないことは「歯を抜かれることだ」と話しました。私の診療所に来ている患者さんにどこでこの歯を抜いてもらったのか聞くと、決まって「~で抜かれちゃった」と言うのです。患者さんは痛いから、グラグラして我慢できないから治療しに行ったと思います。痛みを止めてもらいたかっただけで抜いてもらおうと思っていなかったはずです。でも歯医者は「こんなにグラグラしていたら抜くしかないね」と言って抜いてしまったのだと思います。そこに患者さんの思いと歯科医の思いに大きな違いがあります。抜いて痛みは止まったかもしれませんが「歯医者に抜かれちゃった」という思いは残ったと思います。こういうすれ違いは起こってはならないという思いも私が「歯を抜かない歯医者」になったことにつながっています。デンマークではその話の延長で良い歯科医になるためにはどうしたらいいだろうかという話にもなりました。研究会や講演会に出て知識や技術を磨くことも大切です。でも私はこういう経験はその気になってやればいくらでも出来るけれど「人間として一番大切な心磨き」はどこでするのか話しました。困った人にやさしい気遣いをする。やさしい言葉がかけられる、やさしく接するなどはボランティアにもっとも必要なことです。これこそがおごり高ぶりたい私達の心を謙虚にさせてくれる魔法の杖です。世界最高峰にある福祉の国で福祉を学びながら、ここでも通用するような人間性を養えるのはスラムでやっているハローアルソン・フィリピン医療ボランティアなんだということも、しっかり伝えさせてもらいました。

 今、日本国内で起こっていることはハローアルソン・フィリピン医療ボランティアが実践していることと比べると月とスッポンほどの違いです。

 小学校5年生の今井君が大好きなゲームを買うためにコツコツと貯めてようやく3,000円になった金額を、しかもお父さんに「1,000円でもいいじゃないか」と言われても尚、「自分はまた貯められる。全部林先生に届けて」と言ってくれたこの小学生に恥ずかしくないような生き方を求める中にこそボランティアの真髄、「私達のイズム」があるように思いますが、どう感じてもらえたでしょうか・・・・。

 

20231222日 医学博士・歯科医師  林 春二