2021.08.06 関口団長のお便り

祐介先生、牟田さんこんばんは

 

 日本中が連日オリンピックの歓喜に包まれる中、8月6日の今日、76年目となる原爆の日を迎えました、86日、そして9日は日本人にとって忘れてはならない大切な日でもあります。今年はオリンピックもあってか、原爆や戦争を特集する番組をあまり見かけませんが、「その日」が来たからといってあからさまに報道するようなものよりも、私は国民一人一人が自分の心の中で「犠牲になられた人達への鎮魂(ちんこん)と平和」を祈ればいいと思います。世論の中には「原爆の日」にオリンピック選手たちに黙とうを呼びかける声があると聞きました。一見、平和への祈りや哀悼を捧げる意味では素晴らしいことのように見えますが、私は何となく違和感があります。戦争にはどのような状況でも善悪に関係なくそれぞれの主張が存在します。原爆を落とされた我々日本側の言い分の裏には、逆に日本の戦争行為で多くの人達が犠牲になったのも事実です。また、海外では事実とは関係なしに日本軍の虐殺行為をあたかも真実のように幼少から教え込む国や、現にオリンピック参加国の中には核保有国、軍事拡大国、様々な国が参加をするなかで、全世界が同じ思いで「原爆」と「平和」を捉えられるとは思えません。

 しかし、それでも私は平和を願います。

 オリンピックの目的はスポーツを通じた人間形成と究極の世界平和とうたっています。確かに世界中の国々が自国の主義主張を唱え、大会中でもいくつか政治的な問題を持ち込む場面がありました。しかし、アスリートたちが自らを鼓舞し、お互いを認め合いながら戦い、そして最後に握手や抱擁を交わす姿は、たった一つしかない地球に生きる同じ住民同士が、いがみ合い、罵り(ののしり)合い、奪い合うということがいかに愚かなことかを教えてくれます。今回、新種目の中にスケートボードがありましたね。特に女子選手たちの平均年齢の若さも驚きましたが、彼女たちがお互いの滑りを終えたとき、全員が抱き合いお互いを称え(たたえ)合う姿を見て、私は新しい世界の在り方を考えさせられました。今、SNSを中心にあらゆる人種が国境を越え繋がることができます。そして若者たちは「何が正しく、何が尊いか」を自分の意志で選択し、結び合う「自由」を手にしています。戦争という愚かな時代を決して繰り返させない最大の武器はミサイルでも核でもありません。彼女たちのように競い合いながらも転倒すれば手を差し伸べ、失敗すれば慰め合う、お互いを認め合う心なのです。先週祐介先生が言っていましたね。「友人のいる国に爆弾を落とすことなどできるだろうか。」私は原爆の日の今日、心から犠牲になられた方に哀悼(あいとう)を捧げると共に、戦争によって失った全ての悲しみに心から平和を誓いたいと願いました。その思いを改めて思わせてくれたのはこの炎天下の中、スポーツを通じ世界中に平和を訴えるアスリートの姿でした。

 

202186日 ハローアルソン・フィリピン医療を支える会 団長 関口敬人