2020.11.06 林会長のお便り

 祐介先生・牟田さんこんばんは。

 11月に入りだいぶ寒さが増してきました。今年は台風が少なかったせいで、木々の葉がしっかり残っていて色づいた葉がとてもきれいです。

 「この美しさ いつまでも」これは私が20代の頃、地球の美しさについて書いたエッセイのタイトルです。「自然を残す」ことはとても大切です。自然」というと「手を付けない」または「野放しにする」ことだと思うかもしれませんが違うと思います。

「自然を残す」とは「手を入れたとしても美しさをいつまでも残す」ことが大切だと考えました。木を切ったり、山を削って自然に手を入れ、そこに新たな木を植え、削ったところに手を加え、今まで野放しだった自然に手を加えて「美しくすれば」もっと素晴らしいという考え方です。水害や崖崩れで自然がダメージを受けても、もとに戻すだけでなく、同じ被害を受けないようにする工夫が大切です。傾斜地が崩れた時、次に崩れないようにセメントで塗り固めて改良するやり方が一般的にとられますが、やがてこのセメントは壊れて取り壊すと次の産業廃棄物を産むことになります。

 大自然の中にある石を利用してやれば、見た目にも美しく、手つかずの自然よりはるかに素晴らしくなるはずです。やがてこの石垣が不要になったとしても、もとあった山に返せば元の山になるだけです。もともと山にあったものですから、産業廃棄物になることはありません。日本は豊かになる過程で、経済発展に偏りすぎて大量生産、大量消費に何の責任も感じないで来てしまったように思います。やがて目的を達成したり不要になった時、自然に返せることが当たり前の社会を作るべきでした。コンクリートの壁を石積みの壁にすれば、不要になったら山に返すのです。このように自然に返すというやり方を取り入れることです。コンクリート工事が石積みより(まさ)ったのは、工期の短縮と見た目がきれいで安かったということです。しかし城の石垣は、とても心を和ませる作用もあり堅固(けんこ)で美しさを兼ねています。そして壊れて不要になったら山に返せば害を出すことはありません。先人は私達にこのような素晴らしい物や作り方を教えてくれたのに、私達は便利、快適という名のもとに、こういう本来あるべき姿を忘れすぎていたように思います。今の「Go to ~」にしても全く同じです。確かに「安いからいいだろう」という考え方もあるでしょう。それは売り手が工夫したり努力したものではなく、税金をつぎ込んで無理矢理やっているだけです。このツケを誰が払うのでしょうか。政治家が出してくれるなら結構ですが、そのツケを国民に回すだけなら、もう少しマシな方法を考えてほしいです。これから税金が高くなり、更に生活しにくい社会になって、個人消費もどんどん落ちこんでしまいます。売主が工夫して、リーズナブルで魅力的な商品を考えてくれたら、こうした助成がなくても売り上げは伸びます。そういう工夫をすることが、再生可能で持続力ある社会になるのだと思います。

2020116

 

医学博士・歯科医師 林 春二