祐介先生、牟田さん、こんばんは
祐介先生、先週の土曜日は大変お世話になりました。
その日、私は以前から予定していた祐介先生の病院で行われる難しい症状の患者さんの外科手術を、勉強のために見学に行かせていただきました。
当日は、ハロアル会長でもあり、私たちの師匠でもある林春二先生と、ハロアル副団長でもあり、口腔外科出身の新井先生、そしておまけで戸田先生が集まり、大変濃密な時間を過ごさせていただきました。
詳細は専門的になってしまいますが、林先生が掲げ、私たちの治療理念でもある「絶対に歯を抜かない」というコンセプトのもと、大学病院でさえあきらめるような症例に、皆が知恵を出し合い協力する様子はまさに、フィリピンのスラムで私たちがともに汗をながした風景と重なり、なんだか心が嬉しくなる、そんな一日でした。
今、全国には10万人以上の歯科医師と7万軒近い歯科医院があると言われています。
そんな中、私や祐介先生のように1医院1歯科医師という病院がほとんどですが、日々診療をする中でやはり難しい症状や思うような良い結果につながらない事もあります。
それは私たちの技術不足と言えばそれまでですが、医師は神様ではなくだからこそ日々勉強し、研鑽を積まなければなりません。しかし、その10万人の歯科医師の中で、自分の未熟さを認め、他の先生たちの教えを乞い、それを患者さんにも説明し、共に歩める歯科医師は残念ながら私はあまり見た事がありません。しかし、それこそが医療人のエゴであり最も不必要なプライドなのです。祐介先生が患者さんに「今日は沢山の先生方にも見てもらいましょうね」と語りかけ、患者さんが安心して手術を受ける様子は、私も更なる刺激を受け、とても勉強になりました。
そして、処置を終え、待合室で林先生と話をする患者さんとご家族のお顔を見ると、
本当に嬉しそうで、心から感謝をしてくださっている優しい笑顔でした。
私たちは病を見ると医学的に治療方法を思案し、治癒のために全力を注ぎます。しかし、その中で本当に患者さんが抱えている不安や思いを忘れがちになり、独りよがりな一方的な治療を推し進めてしまいがちです。今回、改めて私たち医療人に大切なことは、
どんな時も患者さんのことを考え、常に自分の足りなさに正直に向き合い、日々努力を重ねることだと痛感しました。
私は翌日早朝に帰らなければならなかったので、まだ薄暗い朝5時に祐介先生宅を後にしましたが、首都高を抜け扇大橋に差し掛かると、そこには真っ赤な朝日が昇りはじめていました。以前も長野の林先生のもとで勉強をさせていただいたとき、こんな風に浅間山を見上げていたことを思い出し、ともに学び、ともに歩む仲間の存在に感謝しながらGotoで賑わう今話題の 栃木県 へと岐路につきました。
2020年10月30日 ハローアルソン・フィリピン医療を支える会 団長 関口敬人