祐介先生こんばんは。
今年に入って猛威を振るった新型コロナウィルスによる感染症も、ようやく落ち着きホッとひと息している人も多いと思います。これまでの約5ヶ月に渡る期間、総理大臣や地方自治体の長の様々な呼びかけがありました。最初からスンナリと呼びかけに応じる人、世間のヒンシュクを買っても自分の欲望を抑えられず、海や行楽地に出かけてしまう人、更には近所の迷惑を顧みないでパチンコに興じてしまう人、最悪のケースは自分がコロナウィルス感染症の陽性者でありながら、スナックだかカラオケショップだか分からないところに行って他人に感染させてしまう人など・・・・多種多様な人間模様を見せてもらいました。私は、皆さんに「どうしろ」「こうしろ」と言えるほど立派ではありませんが、決まったことは守り通す覚悟は出来ていたつもりですし、実際この期間、自宅と診療所を往復するだけでした。そしてひたすら当院の患者さんの口腔ケアを徹底的にやりました。歯科医師会からは、緊急の処置のとき以外は診ないようにという指示が出ていましたが全くおかしな話です。プラークコントロールがしっかり出来ている人のインフルエンザ罹患率は10分の1になるのです。
私は「歯は命の源」という考えですから、どんなにグラグラしていている歯でも抜くような治療はしません。ということは私が治療している歯は、他の先生なら「すぐ抜くレベル」の歯ですから、ケアに問題があるとすぐに再発か悪化します。その時私がすぐケアをしなければならないのです。だから休日や深夜でも対応します。今回の緊急事態宣言が出ても、キャンセルする人はほとんどいませんでした。歯を悪くするのは、歯の表面につく「付着プラーク」という白い歯の汚れと、歯と歯肉の境界にあるポケットという溝の中に歯につかないで遊んでいる「遊離プラーク」があります。歯の表面に付くプラークは、白くて臭いを嗅ぐとくさい臭いがしますが歯みがきをしっかりやれば落ちます。縦、横、斜めにしっかり歯ブラシを当てて磨くように心掛けましょう。ところが遊離プラークは、歯と歯肉の境のポケット、つまり溝の中をプラプラしていますから落ちにくいです。これが厄介なのです。そもそも歯が悪くなる原因は、「歯みがきが出来てない」ということです。今の日本で歯ブラシを買えないため、歯みがきが出来ないという人はいません。実際、朝、昼、晩一日3回磨いている人も沢山います。それでも歯が悪くなるのはどういうことでしょうか。第一に歯みがきが下手。第二に歯みがきを熱心にやらない。第三に歯を悪くして治したことのある人は、その先生や歯科衛生士さんが歯みがきをしっかり教えてくれないから歯を悪くしてしまうのです。今回のように外出を自粛して自分だけで歯みがきをしていると、自分勝手な磨き方になって歯を悪くしてしまう可能性が高くなります。そこで当院は今までと全く変わりなく定期検診をしていたわけです。当院の患者さんは自分自身では完璧に歯みがきが出来ないことをよく分かっていてくれていたため、一人として「感染の危険があるので自粛したい」なんていう人はいませんでした。
2020年5月22日
医学博士・歯科医師 林 春二